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【中古本(状態:美品)】 茶の本 岡倉覚三(岡倉天心)著 岩波文庫
【中古本(状態:美品)】 茶の本 岡倉覚三(岡倉天心)著 岩波文庫
加害の記憶は、忘れられるのではない。
忘れる方が都合のよかった側が、必ず存在する。
ルワンダでは、虐殺が進行する最中、国際社会は「ジェノサイド」という言葉を意図的に使わなかった。その言葉を使えば、介入義務が発生するからだ。言語による回避が、制度として設計されていた。
カンボジアでは、クメール・ルージュを倒したのがベトナムであったという事実が冷戦の論理に照らして都合が悪く、ポル・ポト残党が長らく国連議席を保持した。
天安門で死んだのは中国政府ではなく中国市民だ。しかし西側は経済的関与を選び、批判より取引を優先した。
日本においては、加害を否定する力と、加害を語ることへの政治的コストを上げる力が、外圧としてではなく内側から再生産されつづけている。
これらは例外的悲劇の羅列ではない。
つなげて見れば、経済的・政治的利害が記憶の維持より優先されたとき、歴史は抜け落ちる、という構造が見える。それも、過去の話としてではなく、現在進行形で。
この文脈で、一冊の本を棚に置く。
岡倉覚三『茶の本』(1906年)
皮肉から入らなければならない。
この本が書かれたのは日露戦争の直後、日本が軍事力によって西洋に「認められた」直後だ。岡倉はその瞬間に、英語で、西洋に向けてこう書いた。
「もしわれわれが文明国たるためには血なまぐさい戦争によらなければならないとするならば、むしろいつまでも野蛮国に甘んじよう」と。
血で注目を集めた直後に書かれた、血を否定する言葉。その二重性は、瑕疵ではなく深度だ。
さらに致命的な皮肉がある。岡倉のパン・アジア主義「アジアは一つ」は、後に大東亜共栄圏の思想的土台として利用された。加害から目をそらしながら日本の誇りを叫ぶ者たちが仰ぐ精神的系譜の中に、岡倉は確かにいる。
だからこそ、この本を彼らに渡したい。自分たちが「誇り」と呼んでいるものの、最も雅な先祖が、戦争による文明など野蛮だと書いていた事実を、静かに読んでほしい。
お茶は、陶酔しない
「茶は心神を爽快にさせるが、陶酔はさせない(鈴木大拙『禅と日本文化』)」
思考を止めないために飲むもの、という認識は、岡倉とも通底している。それがこの飲み物の本質だ。
記憶を維持することも、陶酔を拒否することも、構造としては同じだとわたしは思っている。
定価420円+税(462円)
販売価格:440円(税込)
状態:美品
書き込み、折れ、汚れ:なし
2011年4月15日第110刷発行
(第1刷 1929年3月10日)
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